【職人探訪】Vol.7 suosikki 「金継ぎコフレ動画解説が大反響」

堤淺吉漆店が取り扱う、漆、材料、道具について毎回一商品に焦点を当て、実際に使用して頂いている職人さんや作家さんに、使い手目線の評価をしてもらう不定期連載企画。元地域情報紙の記者で、現在は堤淺吉漆店の営業として全国の職人さん、作家さんを回っている私、森住が昔を思い出しながらちょっと記者ぶってお届けする気まぐれコラムです。今回は番外編。

VOL.7「継ぎコフレ suosikki  Instagram

【金継ぎコフレ】

suosikkiによるわかりやすい動画コンテンツ
自粛が続く今、おうち時間のお共に大好評

4.jpg

Go Toトラベルキャンペーンが混乱を招きながら始まった7月22日。そう、この日は私、42歳の誕生日。明日からの4連休、遠出せずに子どもたちをどう楽しませようか考えながら今、パソコンに向かっている。しかし、予想通り寝落ち。翌朝5時に起きて、再度パソコンに向かったが、しばらくすると小学3年生の長男が起きてきた。

「よし、カブトムシ捕りにいくか」。

二つ返事の息子と15分程車を走らせ、前の週下見に行ったクヌギの木に向かった。5本程しかないスポットだが、近づくと幼い頃によく匂ったカブトムシ臭がプーンと漂う。遠目から見てもカナブンがかなり蜜を吸っている。絶対にいる。そう確信して木に近づいた。すると、見たこともない巨大な蜂が。。。危険を感じ息子は木から離した。しかし、ここは父親のプライドにかけて何らかの収穫は得たい。気を付けながら木の回りを探し続けたが居るのはカナブンと蜂。諦めかけたその時、落ち葉が不自然に動いている。最後のチャンスと落ち葉を掻きわけると、黒光りした物体が。素手で掴み取るとツノが無かったことに一瞬がっかりきたが、立派なメスカブトをゲット。息子も気を使って喜んでくれた。近くに住むじーじ(社長)に誇らしげに自慢している姿を見て、連休初日は良いスタートが切れたと自己満足しながら、その日の夜、息子を寝かしつけて今ようやくパソコンに向かったのである。

箸置き【tefutefu】と 拭き漆箸【四季のシリーズ】

箸置き【tefutefu】と 拭き漆箸【四季のシリーズ

と、前置きがかなり長くなりましたが、今回ご紹介するのは、京都市立芸術大学漆工科の同期3人で構成される女性漆ユニット「suosikki」。学生時代、漆を学び知るほどに、漆の不思議な魅力に引き込まれた3人。一方で、漆が現代人の日常生活から遠い存在であることを実感する。共に大学院に進み、同じ作業部屋で制作や研究をする中で一層絆を深めた3人は、いつしか個人の制作だけでなく「もっと多くの人に漆を知ってほしい」という想いが強くなっていった。

そこで彼女たちは、自分たちが身近に出来る漆の普及活動として学祭での漆塗りお箸の販売を試みる。店名を「うるしおいしおはし」と名付け、まずは誰でも手に取りやすいお箸に絞って販売。この「うるしおいしおはし」が現在のsuosikkiの前身。卒業後もそれぞれ別の仕事をしながら漆に関わっていましたが2018年、「お気に入りの漆器とともに」をテーマに、「suosikki」を立ち上げ、漆器をより身近に感じてもらえるような商品を展開し、漆の普及に取り組んでいます。

酒器【yotsuyu】

酒器【yotsuyu

suosikkiさんは、日頃から何かとお世話になっている堤淺吉漆店のパートナー。もちろん当社の漆を使って頂いている大切なお客様です。

suosikkiとはフィンランド語で「お気に入り」の意味。sikki(漆器)という語呂合わせも運命を感じ命名したとのこと。

 

「suosikkiの漆器が、誰かのお気に入りになってほしい」

「お気に入りの漆器で、毎日の食事が楽しくなったらいいな」

 

という想いを込めて、日常で使える漆器を制作し、漆の新しいイメージを発信しています。

拭き漆皿【fuchidori 大皿】

拭き漆皿【fuchidori 大皿

「私たちの商品づくりは、作る。売る。を目標にしているわけではありません。その商品を使ってもらう時間がお客様にとって素敵なひと時に、お気に入りの時間になるように、と考えています」。

彼女たちの生み出す商品は、ナチュラルで見ているだけで気持ちが良い。晴れの日に使う高級漆器や特別な日に使う重厚な漆器とは異なり、まさに日常の食卓を彩る「いつもの食器」。3人らしい肩ひじ張らない自然体の漆器なのです。柔らかい色使いも彼女たちならでは。

すべりにくいお箸【くつした】

すべりにくいお箸【くつした

10.jpg

では、suosikkiの女子3人を紹介します。ホームページでもお顔を出してないので、ここではイラストでご紹介。ちなみにメンバーの竹村雪子さんが描いてくれました。

耳亜沙美(33)京都府出身、大阪府在住。大らかな性格で、主にデザイン、イラスト、WEBサイト運営を担当。ニックネームはたっきー(旧姓から)。商品に描く図案やパッケージイラストはほとんどたっきーが担当。

耳亜沙美(33)

京都府出身、大阪府在住。大らかな性格で、主にデザイン、イラスト、WEBサイト運営を担当。ニックネームはたっきー(旧姓から)。商品に描く図案やパッケージイラストはほとんどたっきーが担当。

竹村雪子(32)兵庫県出身。のんびり屋さんと自己評価するが、実は責任感が強く、しっかり者。デザイン、制作、Instagram運営、写真撮影など、その役割は多岐にわたる。仕事きっちりの信頼できるゆきこちゃんは、とにかく写真がうまい。

竹村雪子(32)

兵庫県出身。のんびり屋さんと自己評価するが、実は責任感が強く、しっかり者。デザイン、制作、Instagram運営、写真撮影など、その役割は多岐にわたる。仕事きっちりの信頼できるゆきこちゃんは、とにかく写真がうまい。

萩原佳奈(33)漆芸作家。京都漆器青年会会員。京都市立芸術大学非常勤講師や京都伝統工芸大学校の助手を経験し、現在は京都市産業技術研究所の後継者育成研修の講師を務める。人望厚いはぎちゃんは、デザイン、制作はもちろん、営業や広報も担当する頼もしい存在。ちなみに当社WEBサイトのガラス漆やクオリアコーティングの商品ページの写真は萩原さんの作品。

萩原佳奈(33)

漆芸作家。京都漆器青年会会員。京都市立芸術大学非常勤講師や京都伝統工芸大学校の助手を経験し、現在は京都市産業技術研究所の後継者育成研修の講師を務める。人望厚いはぎちゃんは、デザイン、制作はもちろん、営業や広報も担当する頼もしい存在。ちなみに当社WEBサイトのガラス漆クオリアコーティングの商品ページの写真は萩原さんの作品。

3人共通するのは、何とも言えないほっこりするリズム。これがsuosikkiの商品に表れている。この心地いい不思議な空気、これこそがsuosikkiが愛される由縁でしょう。是非多くの人に知ってもらいたいです。

拭き漆皿【fuchidori 大皿】

拭き漆皿【fuchidori 大皿

今回、彼女たちには当社から、ある無茶な依頼をした。

あれは新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下の4月中旬。世界中を混乱させる未曾有の事態に当社も経験したことのない危機感を感じていました。漆の業界も、漆芸を学ぶ、高校、大学、専門学校をはじめ、金継ぎ教室や漆芸教室が軒並み休校。あらゆる展示会やイベントが中止となり、漆芸作家の皆さんも窮地に立たされた。もちろん当社もその影響は計り知れない。それでもまだ仕事させて頂いていることに感謝し、「今、自分たちに出来ること」を考えました。その取り組みの一つとして実施したのが、金継ぎコフレの無料動画解説の追加でした。

 

自粛生活が続き、おうち時間が増えたことが理由なのか、金継ぎコフレの注文だけは伸びていました。であるならば、これまでよりも丁寧でわかりやすい動画での解説を付けることで、少しでもおうち時間の有効利用に役に立てればと考え、急遽動画コンテンツを追加することを決めたのです。

そう、その動画撮影と編集をsuosikkiさんに依頼したわけです。

coffret_work4.jpg

彼女たちも予定していた展示会が中止。もちろん、このご時世では注文も少なく、先行きの見えない不安の中にいました。そこで、私が自分で挑戦しようとため込んでいた、割れたお皿やコップを、suosikkiさんに仕事として金継ぎの依頼をし、その修復過程を金継ぎコフレを使って、撮影してほしい。と依頼しました。もちろんお仕事として。

coffret_work1.jpg

しかし、それを思い立ったのは全国一律に緊急事態宣言が出された後の4月中旬。ゴールデンウィークに間に合う形で動画解説を始めたい。と無理なお願いをしたのにも関わらず、快く受けてくれたsuosikkiさん。慣れない撮影に編集。後から聞けば、撮り直しや編集ミスなどで徹夜になることもしばしば。今では笑い話、と言ってはくれていますが、本当に頑張ってくれました。お陰様で動画は大好評。現在は様々な媒体で取り扱いを希望して頂き、売上も好調。その影の立役者は紛れもなくsuosikkiの3人なのです。

この動画解説はPart1「予備知識と下準備」~完成のPart11「仕上げ磨き」まで全11回。当社WEBサイトからアクセスすることが出来、最初の3回分はどなたでも視聴して頂けるようになっています。4回目からはご購入者特典としてパスワード制。付属のパンフレットにPWが記載してあります。動画はこちら。

suosikkiさんに無理なお願いをした4月中旬から初回の動画をアップできたのは5月3日。ゴールデンウィーク後半に間に合わせることができました。その後、毎週1工程~2工程を順次アップし、最後の動画は6月19日に完成。当然、天然漆を使った金継ぎを実際にしながら進める為、漆が硬化する時間が必要なわけで、完成まで約2カ月。現在は全ての動画を見て頂く事が出来ます。

この動画、本当にわかりやすいんです。付属の説明書に沿って説明してもらっていますが、説明書には載っていない、ちょっとしたコツや裏技なども教えてくれています。さらに、作業終了後の漆の処理や保管の仕方、使った筆の洗い方から保管の仕方まで、本当に丁寧でわかりやすい。動画コンテンツ開始前にご購入頂いた方には、ご連絡頂きましたらもちろんPWをお教え致します。

動画の良いところは、何度でも見直すことが出来る事。一時停止しながら自分のペースで進めることも出来る。実は先日、ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタント市川渚さんが、自身のYouTubeチャンネル(Nagisa Ichikawa YouTubeチャンネル)で、金継ぎコフレに挑戦する姿を投稿してくれました。そこには、しっかりこの動画を見て作業する姿が写っています。市川さんは、suosikkiさんの丁寧な動画解説を気に入ってくれたようです。綺麗でカッコいい市川さんの、相当オシャレで素敵な動画、是非ご覧ください。Instagramでもご紹介頂いています。

IMG_4984.jpg
IMG_4986.jpg
IMG_4996.jpg

天然漆と金粉で割れた器や欠けたお皿を修復する「金継ぎ」。数年前からブームに火が付き、今尚人気が続いている伝統技法。現在は様々な金継ぎキットが販売され、漆ではなくエポキシ合成樹脂で接着するものや書籍まで乱立。個人で金継ぎビジネスを起こす人も増えてきました。そんな中、当社が金継ぎセットを販売したのは比較的後発。価格競争ともとれる金継ぎセット市場の中で、あえて価格設定を高くし、コンセプト重視でメッセージ性の強いセットを開発したのです。もちろん天然漆使用です。

それが「金継ぎコフレ」。

img_001M.jpg

最近良く耳にする、SDGsとかサスティナブルという言葉。様々な場面で多用されていますが、いかにも取って付けたかのように見えるものが多い。と思うのは私だけでしょうか?当社は創業当初から、漆というサスティナブルで究極の循環型天然資源を扱い、SDGsの概念に当てはまる仕事を脈々と受け継いできました。そして、これまでずっと「うるしのいっぽ」という活動を通して、漆の素材としての魅力を訴え、モノを大切にする心、壊れても直して使う気持ち、使い繋ぐ意味を伝えてきました。金継ぎはまさにその趣旨に当てはまる技法で、私たちの思いを伝えるのに最適なツール。ブームである金継ぎではなく、金継ぎする意味も考え直していただけたらうれしく思います。

また、金継ぎを通して、漆という素材のことも是非知ってほしいです。この天然素材の魅力は、今のご時世だからこそ、見直されるべきもの。堤淺吉漆店の金継ぎコフレは、漆を通して、今の私たちの暮らしを見つめ直す入り口。持続可能な未来を考える、そんなきっかけにもなるようなメッセージも込めています。是非、お試しください。

今回動画解説を依頼したsuosikkiさんも、私たちと想いを共有する同志。最後に彼女たちの造り出す漆器と今回修復してもらった金継ぎ、銀継ぎ、色継ぎのお皿たちを写真でご紹介します。

suosikkiの商品につきましては、直接お問い合わせ下さい。
https://www.suosikki-urushi.com/

asakitichi tsutsumi